東洋の某国から西欧の小国・ソヴュールの学園に留学してきた久城一弥。彼はある日、殺人事件に巻き込まれ、犯人扱いをされてしまった!? gosick[ゴシック]は桜庭一樹の小説が原作で、2011年の1月から7月までテレビ東京系で放送されていたアニメである。アニメgosick[ゴシック]についてのあらすじや作品解説はもちろん、長文考察レビューや評価を閲覧できます。現在、実際にgosick[ゴシック]を観たユーザによる1件の感想が掲載中で … All Rights reserved. 「GOSICK」シリーズは、直木賞受賞・桜庭一樹が執筆した推理小説。長編小説の『GOSICK』、短編集の『GOSICKs』、続編として描かれた「新大陸編」(『GOSICK RED』他)など、小説という形だけでも多数刊行されています。また、ドラマCD、TVアニメ、コミックなど、様々な媒体で親しまれていることも特徴です。長編小説『GOSICK』の舞台は第一次世界大戦後のヨーロッパにある架空の国・ソヴュール王国。寄宿学校・聖マルグリット学園に通う美しい容姿をした少女・ヴィクトリカと、極東の島国からの留学生・久城一弥が活躍する物語です。2003年に富士見ミステリー文庫から刊行されましたが、完結を待たずして廃刊。後に角川文庫より新装版として刊行、『GOSICK VIII 下 ゴシック・神々の黄昏』をもって完結しました。その後を描いた続編も刊行されたことから「第一期」もしくは「ソヴュール編」と呼ばれています。比較的低い年齢の読者でも楽しめる優しい文章をしており、男性女性問わず人気の高い作品です。ヨーロッパの小国、ソヴュール王国。その山脈の麓に構えられた名門マルグリット学園に籍を置く留学生・久城一弥はとてもまじめな帝国軍人一家の三男です。そして図書館塔の頂上にある植物園には、そこで1日を過ごす金の髪と碧の瞳を持つ美しい少女・ヴィクトリカがいました。2人はヴィクトリカの兄・グレヴィールに頼まれて占い師殺人を解決します。それをきっかけに参加した豪華客船のディナーで、10年前と全く同じ状況の連続殺人事件が起きて……。本作は、過去の回想シーンを綴るプロローグから始まります。その内容は猟犬に襲われる大量の野兎、そして赤い老婆。そして本章が始まるや否や、怪談話に怯える滑稽な主人公一弥とその友人アブリルのちょっとお気楽なシーンへ。推理を期待して読み始めると、少し肩透かしな感じを得るかもしれません。「GOSICK」シリーズは第一次世界大戦後、1924年頃を舞台とした作品です。戦争が根付いた世の中ですから、時に命を軽視したような残忍な犯行、動機が描かれます。その切なさ、重さを一気に読みやすくするのがヴィクトリカと一弥の掛け合い、そして2人を見守る人々の軽快さです。豪華客船「Qween Berry号」を舞台としたこの物語。ヴィクトリカと一弥は10年前と同じ状況下で起こる連続殺人事件の謎を解いていきます。壁に突如書かれた文字、そして消えた死体……ヴィクトリカが解いた謎は本当に単純明快なものです。深い専門知識を必要としない誰でも楽しめる推理は、ヴィクトリカより先に、読者が犯人に気づくこともできるかもしれません。テンポの良いフィクションでありながら、この事件の根底にはしっかりと「戦争」というダークで現実的な一面が描かれています。この事件の発端は大人の恐ろしい遊び。戦争の行方を知る為の孤児を使った大規模な占いだったのです。人々を狂わせる戦争というものの恐怖を、普段は敬遠しがちな若者でもしっかりと味わえるでしょう。「"灰色狼の末裔"に告ぐ。近く夏至祭。我らは子孫を歓迎する」(『GOSICK Ⅱ』から引用)新聞に掲載されていた謎の三行広告を見て、学園を抜け出そうとするヴィクトリカ。そんな彼女の脱走に気づいた一弥も引き連れて向かった先は、ヴィクトリカの母・コルデリアが殺人の罪をきせられ追放された「名も無き村」でした。母の無実を晴らすため、彼女は「混沌(カオス)の欠片」(明確には定義されていませんが、謎を解くためのカギのようなニュアンスで、作中で用いられる用語です)を集めてまわります。そんな彼女が見抜いた真実の犯人とは……。この物語ではヴィクトリカ母娘のダークな生い立ちが明らかになります。「灰色狼」と呼ばれるコルデリアの過去、そしてその娘であるヴィクトリカが背負うもの。閉鎖された空間ともいえる村の習わし、それに、ここの村長の権限はかなり突飛です。しかし、この「灰色狼」にまつわる村の話は今後の「GOSICK」シリーズにとって大切な伏線ともなっています。また今回のストーリーでは、一弥とヴィクトリカの関係が微弱ながらも恋愛要素の強い方向に傾いていることも見逃せないでしょう。何よりも大切なペンダントを犠牲にして一弥を助けたり、占いで「ずっと一緒に居られるか」とお互いが尋ねたり、ヴィクトリカのとても女の子らしい可愛い一面を垣間見ることが出来ます。これらの印象的なシーンも今後の展開にとって大切な伏線となるので、お見逃しなく。ヴィクトリカという人物を知ることの出来る「GOSICK」シリーズを楽しむために重要な1冊です。「青い薔薇」を買うため、高級デパート「ジャンタン」にやってきた一弥。建物の前で出会ったのは、記憶力に優れた浮浪者の少年・ルイジと、「娘をデパートに喰われた」と縋りつく老女でした。そしてデパートに入った一弥が案内されたのは、売り場とは思えない高級な装飾の部屋。立ち去ろうとして道に迷った挙句出会ったのは「悪魔がいる!」と叫ぶマネキンのような少女で……。風邪で寝込んでいるヴィクトリカに電話で助けを請いながら一弥が巨大デパートの難事件に挑みます。毎度なんだかんだと言い争いながらも行動を共にしてきたヴィクトリカと一弥。しかし本作では、一弥が出張に来ているグレヴィールと共にヴィクトリカ抜きで事件を解決する、前巻までとは少し志向の違う作品となっています。ちなみに、なぜヴィクトリカが同行しなかったのか、それは一弥からもらった素敵な着物を上手く着られず、そのまま体を冷やして風邪を引いたからです。プライドが高く素直でないヴィクトリカは、着物の着方くらいわかると突き放した態度で自らの家に帰宅しますが、そこでは「久城が、くれた~」と実は大はしゃぎ。普通の女の子のように恋するヴィクトリカの、何とも可愛らしい一面が堪能できますよ。巨大デパートを舞台とする今回の事件。今までのように目の前に死体が出てきたわけではありません。不思議な部屋、デパートの内部にいるおかしな少女、デパート前で娘が喰われたと主張する気味の悪い老婆。これらを「混沌(カオス)の欠片」として放っておけないと判断した一弥のお節介が、人身売買に利用された少女たちの救出へと駒を進めるのです。また、今作ではグレヴィールの恋模様についても描かれます。残念ながら愛しい相手・ジャクリーヌは最大のライバル警視総監の妻。グレヴィールの勝ち目はありません。しかし、ジャクリーヌを救うために彼が体を張った過去なども明らかにされます。帝国軍人一家の三男である一弥よりも、よほど大和魂溢れる男らしいグレヴィールの行動には惚れ惚れしてしまうでしょう。アブリルと共に映画を観にきた一弥は、学園の時計塔を舞台とした怪談的な作品を鑑賞します。その後、物語の真実が気になった2人は、時計台に忍び込んでみることに。一方、図書館にいるヴィクトリカは金色の本を偶然手にします。それは昔学園に居たと言われる錬金術師の回顧録でした。その本は自分への挑戦状だと、推理に乗り出すヴィクトリカ。そんな時、学園の時計塔で密室殺人が起こり……。アブリルを含め、新しいキャラクターも乱入した推理劇は、事件を解決へと導けるのでしょうか。学園内にある時計塔が舞台となる今作。錬金術師・リヴァイアサンの回顧録を自分への挑戦状だと息巻くヴィクトリカは「混沌(カオス)の欠片」を集めるために下界(学園内)を散策。結果、担任・セシルの手によってはじめて授業に参加させられます。クラスにやってきたヴィクトリカを待ち受けていたのは一弥をめぐる恋敵・アブリル。水と油のような2人でありながら、一弥以外にもヴィクトリカにもう1人理解してくれる友人が出来た瞬間、とも言える貴重なエピソードです。そして時計塔をめぐるリヴァイアサン殺人事件は、建設当時からの時計塔の秘密をも暴くこととなります。「人が何度も躓く階段がある」というヒントから、プロテスタントを匿う秘密部屋を作るために階段が歪んでいた、という真実を見つけるヴィクトリカの推理力に脱帽です。また国政をも動かそうとしていた錬金術師・リヴァイアサンが、アフリカ人であったという事実。祖国の自由を取り戻すため、命がけでソヴュール王国へと乗り込んできたリヴァイアサンの姿は、胸に詰まるものがあります。狭い学園内で起こった事件だからこそ味わえる、推理の深さが興味を惹く一冊です。ある朝学園から忽然と消えたヴィクトリカ。父親であるブロワ侯爵の意向で、遠いリトアニアの修道院「ベルゼブブの頭蓋」に幽閉されてしまったのです。それはヴィクトリカの母であるコルデリアをおびき寄せるための罠でした。修道院では大好きなお菓子はもちろん、食事を一切取らず、本も読まず、口も利かず、自分らしさを全く失い、日々弱っていくヴィクトリカ。一弥はヴィクトリカを救うために「ベルゼブブの頭蓋」へと向かいます。父親であるブロワ侯爵の指示により、荷物も持たないまま幽閉されるヴィクトリカ。普段は孤高で何事にも負けないヴィクトリカですが、今回は食事もとらず、本も読まず、死にそうな状況に追い込まれます。そんなヴィクトリカを助け出すのはもちろん一弥です。また、普段からヴィクトリカの世話を焼いているセシルだけでなく、犬猿の仲であるはずのグレヴィールまでもがヴィクトリカを心から心配している様子がうかがえます。あまりに酷な運命を背負い、自分の感情をうまく表すことが苦手で意地っ張りなヴィクトリカのことを、心底理解してくれる仲間がこんなにもいます。そんな暖かい事実を改めて「母は変わらず、小さな娘を愛していると。おまえが鳴かなくともやってきたと。伝えてくれ」(『GOSICKⅤ』から引用)惨い殺人に関する推理を味わうだけでなく、残酷すぎるヴィクトリカの運命に希望が持てるような愛をも感じることの出来る一冊です。リトアニアの修道院「ベルゼブブの頭蓋」から何とか脱出した一弥とヴィクトリカ。学園へ帰る為に乗った豪華列車「オールド・マスカレード号」のコンパートメントで出会ったのは、自らを「死者」「木こり」「孤児」「公妃」などと名乗る不思議な乗客たちでした。その後、車内で行われたゲームの最中に孤児が毒殺される事件がおきます。全員が仮面をつけたように自らを偽る閉鎖された車内。真の犯人とは……。『GOSICKⅤ』で修道院から脱出し、帰宅するために乗り合わせた豪華列車で巻き起こる殺人事件を描いた物語です。時系列的には前作から続いていますが、続けて読まずとも推理を十分に堪能できるよう工夫がされています。今回の事件は同じ列車の同じ場所に乗りあわせた6人によって構成されます。まるで仮面舞踏会でも催されているかのごとく、自らの素性を明かそうとしない人々。この物語の主人公であるヴィクトリカと一弥以外、誰と誰が知り合いなのかも全く分からない、お互いがお互いをけん制し合う時の中で起こる殺人事件。登場人物と事件のエリアが限られている分、読みながら推理しやすい作品です。またその分、物語のラストで繰り広げられる取り調べのシーンでは、思わず唸ってしまうような「混沌(カオス)の欠片」の回収が堪能できます。特に「公妃」を名乗っていた女性の真実には現代社会にも通じるものがあり、驚きと共に深く納得してしまうでしょう。「列車の止め方」に関してなど賛否両論の起こりそうな、ツッコミどころもあるストーリーともいえますが、王道の推理小説らしさも味わうことができます。ブロワ侯爵の指示により、首都ゾウレムにやってきたヴィクトリカ。その目的は10年前に起こったソヴュール王国最大の未解決事件、「王妃ココ・ローズの首無し死体事件」をヴィクトリカに解決させることでした。彼女を追いかけゾウレムにあるファントム劇場へとやってきた一弥。そこで耳にしたのはヴィクトリカの母・コルデリアが踊り子として在籍していたという事実、そしてココ王妃に似ていた踊り子・ブルーローズの失踪事件でした。娘であるヴィクトリカを「灰色狼」「政治的な道具」としかみなさない父・ブロワ侯爵。なぜコルデリアがブロワ侯爵の子どもを身ごもったのか、今作ではその真実が明らかとなります。今回、ブロワ侯爵はヴィクトリカの明晰な頭脳を、対立する科学アカデミーへの切り札として利用しようとしますが、すべてを悟ったヴィクトリカはブロワ侯爵に、犯人が誰であるのかという最も重要な真実を伝えません。一方、真の犯人である国王・ルパート陛下と、その腹心であるロジェの2人からヴィクトリカを守る一弥の姿は、帝国軍人一家の三男という肩書に恥じない、強く立派なものです。普段は女難の相が出ているかの如く女性にやられっぱなしの彼ですが、彼本来の男らしい強さを感じる今後の布石となるシーンです。そして今回の物語で何よりもゾッとするのは、学園に戻る最後の馬車のシーンでしょう。学園の近くにあるりんどう畑の女性と男性。一見、穏やかな女主人と召使いに見間違える2人が、実は殺されたと思われていたココ王妃とその混血の息子であることが明らかになります。ヴィクトリカの推理が間違えていたという今までにないラストからは、今後の不吉さしか感じることが出来ません。読後に、なんとも言えない不安が残る一冊です。聖マルグリット学園に在籍するヴィクトリカと一弥が、名推理を繰り広げるソヴュール編の、上下2巻に渡る完結編です。1924年のクリスマス、ヴィクトリカは一弥にヒマつぶしのため、15個の「謎」を探すよう依頼します。やっと最後の1つというところまできた年末最後の日、グレヴィールはヴィクトリカに、村で起こったある殺人事件の推理を依頼しました。その犯人と被害者から、戦争の予感を感じ取るヴィクトリカ。いずれ近いうちに自分への迎えが来るに違いないと悟りました。しかし年明け早々、先に「徴兵」という形で迎えが来たのは、留学生である一弥のほうでした。戦争により引き裂かれたヴィクトリカと一弥。2人の運命とは……。残忍な事件を描きながらも異国情緒が溢れる、おとぎ話のような「GOSICK」シリーズ。しかし再び世界大戦が始まった世を描いた今作では一変、辛く悲しい物語が続きます。当たり前のように聖マルグリット学園に集っていた仲間たち。しかし戦争によって離れ離れを余儀なくされます。ヴィクトリカはまたも、父親の手によって幽閉、一弥は母国に戻り戦争へと駆り出されるのです。ごく普通に生活していた登場人物たちすべての生活が侵されてしまう今作は、推理小説ではなく戦争の最中を生き抜いた若者たちのドラマのようです。そんな暗く重いストーリーの中でスパイスとなるのは、ヴィクトリカの兄・グレヴィール。父親の犬だったグレヴィールは大切な妹・ヴィクトリカを助けるため、初めて父の命令に背きます。またヴィクトリカは、幽閉されていた自分の身代わりとなってくれた母・コルデリアから受取った「未来へ」というメッセージだけを希望に戦火を生き抜きます。無事にたどり着いた未来には、大切な一弥との人生がありました。いかなる環境下でも希望を持つことの大切さを知る、涙涙の完結編です。
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